夢を叶える145☆セルフイメージの変容と引き寄せ
映画「ルーシー」は、主人公ルーシー(スカーレット・ヨハンソン)が、とんでもない事故で脳の構造に異変が起こり、スーパーマンも足元に及ばない超能力をつけるというSF映画です。が、映画の紹介が、今回の目的ではありません。この映画のサイエンス性は、普通の人間の脳細胞は、死ぬまで約10%程度しか使っていない、ということからはじまっています。ルーシーの脳の活動領域は、20%、30%と次第に増え、100%に届いた時、ついには“神って”しまいます。
ところで、身近な脳力で「記憶力」があります。脳力の一部とはいえ、10%程度しか使っていないのなら、脳を開発することで、せめて20%まで活用できればスゴいことになるのではないか?と想像してしまいます。
そこで思うのが、一体、人間はどこまで物事を記憶することができるのか?また、記憶を高めるには、どんな方法があるのか?という疑問です。たとえば、円周率を何万桁まで覚えられる人がいますが、そもそも頭の構造が違うのか、はたまた単なる“コツ”なのか、大変興味深いものがあります。
【脳の不思議】人はどこまで記憶できるか
1.驚異的な記憶力を持つ人の、定番の記憶方法
「世界記憶選手権」というのがあって、競技内容をみると、円周率のような延々とつづく数字の羅列を覚えたり、関連性のない単語を果てしなく覚えて、その速さや正確さを競います。そんな競技に参加する人は、どんな天才なのかと、頭の中をのぞいてみたくなります。そういった記憶力に長けている人たちへのインタビューで、共通しているのは、
「学校の成績が、特別によかったわけではない。
ただ、ちょっとしたコツと根気で覚えられるようになっただけ」
という謙虚(?)な回答です。
単純に数字を覚えようとしても、普通はせいぜい数桁が限界です。しかも、よく似た数字が出てくると混乱しはじめ、数分もたてば忘れてしまいます。しかし、記憶の達人は、意味のない数字の羅列や関連性のない単語を、何の工夫もなく覚えているわけではありません。彼らがよく使う方法は、数字のイメージ化です。数字のイメージ化というと難しそうに聞こえますが、歴史年表の語呂合わせと同じ理屈です。「1492」という無意味な数字の羅列が、「石国見つけたコロンブス」と言った途端、アメリカ大陸が“石の国”だったかどうかは別にして、映像として帆船で海を渡ったコロンブスが頭に浮かぶのです。
2.空間認識(イメージ)の活用
映像化による記憶の方法は、人により様々です。たとえば、「1」は「頭髪」、「2」は「額」、「3」は「眉毛」・・・といったように、あらかじめ、体のパーツに「番号」を決めておきます。これは、「28番・左手親指」といったように、いくらでも細かくできます。そして、無秩序な単語の羅列があって、28番目が「ハサミ」という単語だった場合、頭の中では「ハサミで左手の親指の爪を切っている」イメージを描きます。すると、28番目の単語は?と聞かれただけで、左手親指につながり、「ハサミ」が映像化されて蘇ります。
さらに、映像に刺激を与えると、より印象が強くなり、記憶は深く鮮明に残ります。「ハサミで親指の爪を切ったら、まちがって指を傷つけて痛かった!」と思い込めば、「28 = 左手親指 = ハサミ」が痛い思い出として、決して忘れられない記憶化が完成します。
3.頭の中の「YouTube動画」
もうひとつ、こんなシミュレーションをしてみましょう。朝の出勤時の、駅までのルートを頭で辿ってみると、数字を思い起こす時の苦しさとは違って、なんだか楽しい気分で記憶を思い起こせるでしょう。家を出て、真っすぐ歩くと左にボロボロの三四郎さんの家、その向かいが駐車場で、車は40台ぐらい、さらに10m近く歩くと三叉路で、左に曲がる。ちなみにこの三叉路の左手は、最近家が建ったばかりの山家さん、数メートル歩くと、右手に梅の木があって、春先には紅梅の綺麗な花が咲いている・・・
いかがですか?最寄りの駅までの10分を、膨大なデータ量の動画として、頭の中で再生できるのです。これは、驚くべきことです。記憶力選手権の参加者は、この通勤ルートの三四郎さんの家、駐車場、三叉路の山家さん、そして梅の木に、それぞれ番地をふって、「言葉」をくっつけていくのです。まずは、歩くスピードで、梅の木に「28番地の梅の木がキレイに咲いてニヤ(28)と喜ぶ・・・」という物語をつくって、番地を確実にしていきます。これも、人間の体の番地と一緒で、細かくすればするほど、覚えられる量が増えます。そして、「亜希子さんの家のダックスフンド = 17番地の3号」に、記憶対象の“しょう油”を貼りつけるなら、たとえば「しょう油をなめてびっくりするダックスフンド」とイメージするのです。
映画「ルーシー」では、驚異的に活性化した脳力で、ほしい情報をインターネットの中に「入って」すべてとり入れたり、街中を飛び交う通信データを、一本一本「読み解く」ことまでできるようになりました。その時、すでに使用している脳は50%!絵空事と捨て置く前に、一度、自分の脳力の限界を試してみませんか?もちろん、円周率なんて、普通の人は興味はないでしょう。ならば、英語の単語、選手名鑑や俳優名鑑の名前と顔の一致、専門知識や用語の習得など、自分の最も興味のあるところで、あなたも“脳力開発”に挑戦してみませんか?
一説によると、人間の「脳力」をコンピューターの容量に換算すると、約1ペタバイトあるようです。テラバイトの千倍というから、「もう頭がいっぱいで入らない」ということはないので安心してください。あとは、覚えようとする“根気”だけです。
根拠のない自信を持て。それを裏付ける努力をせよ。このモットーを実行するのが難しいのは、両者が往々にして逆の志向性だから。自信を持つ人は、過信して怠ける。努力する人は、現実にとらわれる。地べたを這い回りつつ、同時に空の星を見上げる人だけが、「挑戦する脳」になれる。
茂木健一郎
まとめ
【脳の不思議】人はどこまで記憶できるか
- 脳は、死ぬまでに10%程度しか使っていないといういうのは、本当?
- 身近な脳力「記憶力」で、あなたの限界を試してみませんか?
- 驚異的な記憶力を持つ人には、意外な記憶方法がある。
- 文字認識よりデータ量の多い、空間認識(イメージ)を活用しよう。
- 頭の中の「YouTubeの投稿動画」を楽しもう。
- 脳内容量は、1ペタバイトあるので安心。
著者プロフィール
- プロフィール:すぐ横に畦道の見えるところで書いています。人間みんな1個ずつ持っている「脳」の生理について勉強中です。自分の持ち物なのに、知らない不思議な仕組みがいっぱいあって、ライフワークにしようかなって思っています。誰か教えて下さい。
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