「9時までには、帰ってこなあかんで!」
母の声を聞き終える前に、私は家を飛びだしていた。真冬の寒空の下、短いスカートに、なれないブーツをはき、母の赤の口紅を塗り、精一杯の大人びた格好ででかけた。なんとか17歳にはみえないように。
セルフイメージの変容と引き寄せ
By neneco
「9時までには、帰ってこなあかんで!」
母の声を聞き終える前に、私は家を飛びだしていた。真冬の寒空の下、短いスカートに、なれないブーツをはき、母の赤の口紅を塗り、精一杯の大人びた格好ででかけた。なんとか17歳にはみえないように。
By neneco
ない。
どこを探しても、ない。
ヴィトンのバッグがない。
高校生の時、雑誌の中の、すごく大人っぽいモデルさんが持っていたヴィトンのバッグで、ずっと憧れてて、はじめてのバイト代でドキドキして買ったものだ。大切に、白い専用の袋に入れてしまっていたのに、どこにもない。
三四郎に聞いても、知らないし、見たこともないという。
実家に電話して、母に聞いても、知らないという。
By neneco
三四郎と、大好きなお笑い番組を観ながら、夕飯を食べていた時だ。私の携帯電話が、めずらしく鳴った。本当にめずらしい。
三四郎とつき合いはじめてから、私はほとんど人と関わらなくなっていた。集まりや飲み会は99%断っていたから、大学の友人も、いつしか誰も誘わなくなっていた。三四郎にはその都度、集まるメンバーをひとりひとり名前を言わないといけなかったし、集まりに1人でも男がいると、行かせてくれなかったから、だんだんとそれが億劫になっていた。そして、電話もメールも、三四郎以外には良子としかやりとりしなかったし、家族とも連絡しなくなっていた。
そんな私の携帯が、鳴ったのだ。
以前、ご飯前に電話にでて、えらい目にあったので、私は誰からか見ることもなく無視していた。
By neneco
「アン、おかえり♪
今日の晩御飯は、
きのこのクリームパスタ」
三四郎は、今日も家にいる。一応は成人している大人だ。なのに、ここ最近は毎日家にいる。私が学校から帰ると、朝の食器はもちろん、洗濯物も洗って干して片づけられ、部屋はキレイに掃除され、テーブルには晩御飯の準備がされている。
「俺って、
完璧な専業主夫やんな!」
By neneco
今夜は久しぶりに、ディナーの約束をしている。相手は高校時代からの友人、良子。もともと出不精な私を、無理やりでも誘ってくれる昔馴染みは貴重だ。
私は東京の大学へ進学した。とにかく一人暮らしがしたかった。厳格な父は、髪の毛を染めることも、ピアスも、外泊も、彼氏が社会人なのも、許してくれなかった。とはいえ娘に嫌われたくない父は、門限を過ぎて帰宅した娘への怒りを、全て母へぶつける。母に悪いという理由で私は「いい子」を努めて装ったが、バレないように様々な遊びをした。父には想像もつかないようなことを、それはもう、たくさん。そんなキラキラの思い出を背負って、わざわざ東京まで良子が会いにきてくれたのだ。私は朝からソワソワしながら準備をはじめた。同時に、三四郎の機嫌も悪くなる。
By neneco
三四郎は、夜中に大声を張りあげ帰宅した。マンションなのに、玄関のドアを何度も何度も蹴りあげて、大声で叫んでいる。
「開けろこらぁあーっっ!!」
私は飛び起きて急いで玄関を開けた、瞬間足が飛んできて、私も飛んだ。泥酔しているのか呂律が回らず、目もコワイ。
「はよ、開けろゆうてるやろ・・・」
やめて、の声が届くはずもなく、ひたすらワケもわからず蹴られつづけるのを泣きながら耐え、早く寝てくれることだけを願っていた。気がすむと、三四郎は寝る。何回蹴られても、慣れない。怖い。しばらく体が震えて、そのあとなぜかいつも体温が下がり、お腹が痛くなり、下痢をする。
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