夢を叶える145☆セルフイメージの変容と引き寄せ
「もう、ここらで終わりにしようか」
という時に使われる言葉、「潮時」。
実は、「潮時」の本来の意味は、何かの終りを示す言葉ではないのです。「潮時」の本当の意味は、いったいどういうものなのでしょうか?そして、なぜみんな、間違ったまま「潮時」を使っているのでしょうか?
言葉は生き物です。間違って使われるには、それなりの理由があるはずです。
【終わりの美学】夢を叶える出口戦略☆「潮時」の使い方は間違っている?
「潮時」の本当の意味
「もう、やめよう」
「もう、終わりにしよう」
「もう、限界だ」
そのような意味でつかわれることの多い言葉、「潮時」。しかし、本来の意味は、「物事の終り」を意味する言葉ではありませんでした。文化庁のホームページによると、「潮時」の本来の意味は、「ちょうどいい時期」を意味する言葉だそうです。「潮」という漢字が使われている通り、語源は「海」からきています。漁師が潮の満ち引きをみて、漁に出るタイミングを決めていたことに由来するのです。そのため、「もう潮時だ。終わりにしよう」という言い方のように、「そろそろ潮時だから、はじめようか」という言い方も、間違っていないのです。
今までの「潮時」の使い方は間違っていました。皆さん、正しい日本語を使いましょうね。 ・・・と結論をだすのは、まだ早いです。間違って使われてきたからには、それなりの理由があるはずです。つまり、「物事は終わりが肝心」ということを、多くの人が実感しているからこそ、「潮時」と言う言葉が「引き際」と同じ言葉のように使われてきたのではないでしょうか?
井上雄彦の「終わりの美学」
1990年から6年間、少年ジャンプで連載され、今なお大人気を誇るバスケット漫画「SLAM DUNK」。この漫画は、全国大会の2回戦で、主人公たちの湘北高校が絶対王者の山王工業に勝ったところで、「死力を出し尽くした湘北は、次の試合はぼろ負けした」として終わっています。多くの強豪校との対決が示唆されていたにもかかわらず、なぜ、突然終了してしまったのでしょうか?その理由の一つとして、作者の井上雄彦さんは、「これ以上の試合は描けないと思った」と述べています。
井上さんは、スラムダンク16巻の作者コメントで、1993年のマイケル・ジョーダンの引退にふれ、「衰える前の引退」と称しています。ここから察するに、井上さんは「衰える前に終わらせる」という美学を持っているのではないでしょうか?
四角大輔の「逃げない覚悟を捨てる」
レコード会社で、絢香などのアーティストのプロデュースに携わった後、退職してニュージーランドに移住した四角大輔さんは、著書「自由であり続けるために20代で捨てるべき50のこと」の中で、捨てるものの一つに「逃げない覚悟」を挙げています。四角さん自身、会社員時代から「今の会社でずっと働かなければいけない」という考えはなく、「会社員がダメだったら学校の先生になろう」「ダメでもサバイバル生活で何とかなる」「ダメだったらニュージーランドに移住しよう」と思っていました。どれも決して、楽な選択肢ではありません。しかし、「ダメなら、今の仕事をとっとと終わらせて、別のことをしよう」と考えることで、だいぶ楽になったそうです。
「この仕事がいつまでもつづく」と考えると、人は憂鬱になってしまいます。しかし、「とりあえず半年やって、ダメならもうやめよう」と終わりを意識するだけで、気持ちはだいぶ楽になりますし、やめた後のことにも意識が向くようになり、やめた後の準備もしやすくなります。「終わりを意識する」ということは、とても重要なのです。
安藤美冬の「出口戦略」
集英社の社員を経て、フリーランスで仕事をするようになった安藤美冬さんは、著書「冒険に出よう」の中で、「出口戦略」を持つことの重要性を語っています。「出口戦略」とは、どうやって、今やっている仕事を終わらせるか、ということです。
安藤さんは著書の中で、「挑戦の分母を増やす」と言う言葉で、さまざまなことにトライすることを勧めていますが、トライしたはいいけれど、失敗だったとわかった時、うまくそのトライを終わらせることで、ダメージを最小限にとどめることができると書いています。
保阪正康が語る、「終わらせられなかった」太平洋戦争
その最たる例が、太平洋戦争の日本軍です。なぜ、日本はあの戦争に負けたのか、様々な専門家が分析していますが、昭和史研究家でノンフィクション作家の保阪正康さんは、「あの戦争は何だったのか」などの著書で、日本軍が戦争での「出口戦略」を持っていなかったことを指摘しています。真珠湾攻撃というセンセーショナルな幕開けをした太平洋戦争でしたが、「何を達成したら日本の価値なのか」ということが、日本軍のなかでは曖昧でした。日本軍が設定した勝利の条件は、「敵の戦意喪失」でした。しかし、それもいったい、何を持って戦意喪失とみなすのか、どこまで追い込めば敵が戦意喪失になるのか、ということを考えると、やはり曖昧なのです。
もし、日本軍にもっと明確な目的があったら、「もう無理そうだからやめよう」という判断が、もっと早くできたのかもしれません。
森博嗣が語る「ワンシーンの夢」
「すべてがFになる」などで知られる小説家の森博嗣さんは、著書「夢の叶え方を知っていますか?」で、多くの人の描く「夢」はワンシーンである、と指摘しています。たとえば、あこがれの舞台に立つシーンだったり、あこがれの職業について働くシーンだったり、多くの人はたった一瞬か、ごく短い時間の映像しか想像しません。
しかし、夢というのは、決して瞬間ではなく、ある程度の長い期間をもつものです。その夢が「仕事」ならば、ほんの一瞬その仕事をするのではなく、生涯にわたってつづけていきたいという人が多いでしょう。しかし、多くの人は、ほんの一瞬しか思い浮かべず、「生涯にわたる」なんて長い期間のことは想像しません。よく「現実に押しつぶされる」という表現をしますが、ここでいう現実とは、あらかじめ想定しなかったことがおきてしまっただけでしかないのです。「夢の終り」までを含めた、長い期間での夢の設計が大事なのです。
ここまで、多くの人の「終わりの美学」をみてきました。今、熱中していることの終りを考えるのは、決してネガティブなことではなく、熱中しているものをより一層よくするためなのです。
「潮時」という言葉が、物事の終りのみに使われるようになったのは、何事も終わりが肝心だから、そのタイミングをしっかりと見極めることが必要という、先人の知恵が背景にあるのではないでしょうか?
何はさておいても、
人は心からの希望を絶滅せねばならない。
怒りの爆発もなく、
天を恨むこともなく、
平和な絶望こそ英知そのものである。
アルフレッド・ド・ヴィニ
まとめ
【終わりの美学】夢を叶える出口戦略☆「潮時」の使い方は間違っている?
- 物事の終らせ方を意識することで、ダメージを少なくとどめられる。
- 今、熱中していることの終りを意識することで、よりよいものをつくることができる。
- 終わりを意識することで、気持ちは楽になり、終わった後のつぎの準備を進めることができる。
著者プロフィール
- 2015年にピースボート地球一周の船旅に参加し、現在は仮面ライダーの記事を中心にフリーライター業。また、埼玉を中心に、道端の野仏から日本の民俗を研究している日本民俗学ファン。現在、船旅や日本民俗学などをテーマにしたブログ「僕らは旅人」を展開中。
はるを迎える♪2017.08.16これから7パターンの正義の話をしよう
はるを迎える♪2017.08.08【自分探しの旅】その意外な落とし穴
はるを迎える♪2017.08.01「厳粛」「謙虚」、いま話題のフレーズの本当の意味とは?
はるを迎える♪2017.07.20本田直之&四角大輔から見る「クリエイティブ」の意味