夢を叶える145☆セルフイメージの変容と引き寄せ
前回は、自然哲学の祖であるミレトス学派について考えました。この学派はエーゲ海東岸のミレストで発展しましたが、イタリア半島のエレアでも哲学が発達しました。この哲学は、エレア学派と呼ばれています。
一方、ミレトスを含むイオニア地方でも、ミレトス学派に続く、自然哲学を中心とした哲学者がでてきました。ミレトス学派を含むイオニア地方で栄えた哲学をイオニア学派と呼んで分類しています。
ミレトス学派とエレア学派は異なった地域で発達しましたが、ミレトス学派の主張をエレア学派の哲学者が考察した結果、これを否定したりしてお互いに影響しあいます。
簡単に言えば、イオニア学派は、観察・考察を通して、世界を支配する法則を見出そうとしたのに対し、エレア学派は、合理的・理性的・論理的に考察し、世界の法則を見出そうとしました。エレア学派は、世界の法則の考察結果よりも、合理主義的な考察方法が重視されています。
【ギリシャ哲学②】万物は争いより生じる☆イオニア学派とエレア学派
クセノパネス
エレア学派のクセノパネス(紀元前560頃~紀元前470頃)は、ギリシャのイオニア地方出身ですが、イタリアのシチリア地方で活躍しました。彼は、ギリシャの神々が「よからぬこと」をしているので、このようなホメロスの叙述詩で挙げられた神々を否定しました。たとえばゼウス神は、ヘラという妻がいながらセメレという女性と不倫をしています。そして、ギリシャの神々などを参考にして、自分自身が考察した神の特徴を示しました。以下に、その神の特徴を列記します。
- 神は唯一
- 神は世界で最も偉大
- 神の姿や考え方は、人とまったく異なる
- 神は、全身で見て、全身で考え、全身で聞く
- 神は心で思うだけで、すべての物を動かす
- 神は動くことなく、ただ一所にずっといる
- 神は不生
人間は、目、耳、鼻、舌、体の五感で物事を認識します。さらに、心臓や骨を持っています。つまり、多数の器官から成り立っているのです。人間は多数の器官から構成されるので、「多」に属すると考えました。これに対し神は「一」に属すると考えたのです。偉大な神は、姿や考え方も人間と異なり、姿や形は「一」なので、全体で見たり聞いたりします。
生まれてしまったひよこ
ヘラクレイトス
イオニア学派のヘラクレイトス(紀元前540年頃~紀元前480年頃?)は、ギリシャのエペソスで活躍しました。ヘラクレイトスは、アルケーを「火」であると説きました。どうしてアルケーが火であるという結論に至ったのでしょうか?ヘラクレイトスの思想を見てみましょう。
万物の流転
ヘラクレイトスは
流転するひよこ
と考えました。
あなたは、同じ川に2度入ることはできない
2度目に入る川は、1度目に川に入ったときの川の水ではありません。万物はうつろい行くのです(東洋でいう諸行無常です)。この考えに至った背景には、対立と調和に関する問題があります。これは、一種の相対論なのです。ヘラクレイトスの言葉を見てみましょう。
『みずからと対立するものは、みずからと調和している。逆方向に引っ張り合う、力の調和というものがあるのだ。たとえば、弓や竪琴の場合がそれである』(断片51)
『神は昼にして夜、冬にして夏、戦争にして平和、飽食にして飢餓である』(断片67)
たとえば、戦争と平和は対立する事項です。だけど、戦争は平和が少なくなった状態、または平和は戦争が少なくなった状態と考えると、戦争も平和も状態が変化しただけのことになります。戦争や平和は、人が勝手に解釈しただけなのです。上り坂も下り坂も「同じ道」で、下から登ろうとする人にとっては上り坂、上から下ろうとする人にとっては下り坂なのです。こう考えると「昼と夜」「夏と冬」「飽食と飢餓」は、同じ物体や状態が変化しただけになります。
では、何が変化したのでしょうか?それは、人の解釈、すなわちロゴス(理性)が変化したのです。
理性に支配された流転
ヘラクレイトスは、「火」と「魂」を同一の物体と考えました。そして、「魂」から「水」に、「水」から「土」に変化し、逆に「土」から「水」、「水」からは「魂」にもなります。
このようにして、万物の原理はロゴスに支配された、うつろい行く「火」のようなものだと結論づけたのです。
パルメニデス
パルメニデス(紀元前500年または475年~没年不明)はエレア出身で、エレア派の始祖と言われています。クセノパネスをエレア派の始祖とする説もありますが、微妙なところです。ヘラクレイトスと同時期に活躍しました。
合理主義的存在論
ヘラクレイトスは「万物は流転し、永遠不変の存在はない」と主張したのに対し、パルメニデスは「万物は変化せず、永遠不変である」と考えました。ミレトス学派や、ヘラクレイトスの世界認識・アルケーは感覚的であり、論理的ではないとして、ミレトス学派を含むイオニア学派を否定したのです。
パルメニデスは、つぎのように考えました。
人が物事について考える時、ある物体について考えたり、ある物体に名前をつけたりしている。これらはすべて、存在している。なぜなら、存在しない物体について考えたり、名前をつけたりはできないからである。こう考えると、人が名前をつけたり、思考の対象となるものは、すべて存在することになる。
世界は流転するように見えるかもしれないが、世界の流転の背後には、知性によってとらえられる理念があり、この理念は永遠に不変の実体である。この実体により、様々な現象が存在するのであり、実体そのものは永遠不変である。
生成、消滅、運動、変化、多数性、多様性は、感覚的な現である。有るもの(有)は決して、生成も消滅もしない。真に実在する実体は、唯一、不生、不滅、均等、一様、不変、不動である。
このようにして、「火」が「水」や「土」に変化するヘラクレイトスの主張を否定したのです。
互いに異なるものから、もっとも美しいものが生じる。万物は争いより生じる。
ヘラクレイトス
まとめ
【ギリシャ哲学②】イオニア学派とエレア学派
イオニア学派のヘラクレイトスは、単に万物の根源(アルケー)が水や火と説明するだけではなく、アルケーを支配する法則を持ち出しました。
これに対し、イタリアで発生したエレア学派は、擬人化された神と、本質的な神概念を対比したクセノパネスなど、感覚的な流転する現象的世界と、不変的な世界の根源を対比しました。「偽の世界」と「真の世界」の対比は、「偽の世界」に「真の世界」を追加したと考えられます。そして紀元前6世紀後半に、「本質」に「本質の法則」を追加したと、私は考えています(様々なギリシャ哲学の解釈があります)。
著者プロフィール
- 理系大学を卒業し、製造業に携わっているにもかかわらず、西洋や東洋の思想に興味を持ち、コツコツと勉強しています。
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