夢を叶える145☆セルフイメージの変容と引き寄せ
30代半ばで、営業の仕事で悩んでいるときでした。ふらりと入った本屋さんで出会ったのは、「眠りながら成功する」という本。著者はジョセフ・マーフィー博士、翻訳は大島淳一氏でした(原題は「THE POWER OF YOUR SUBCONCIOUS MIND」)。
ジョセフ・マーフィー博士 (1898 – 1981)は、潜在意識を利用し自己啓発をうながして、幸福を達成することを提唱した人です。 「眠りながら成功する」という本には、潜在意識(SUBCONCIOUS MIND)を利用して夢を実現するということが、詳しく書かれていました。
マーフィー博士は、潜在意識の効用を電気にたとえて、
まーぴよ博士
と言うのです。
【ジョセフ・マーフィー博士】潜在意識の「夢を叶える」冒険物語
私は、「なんと素晴らしい本だ」と思ったのでした。それまでは、経営戦略的な実用書ばかり読んでいました。「どうしたら営業成績をのばせるか」というようなものです。無味乾燥な数字の羅列と、人間味のない言葉で書かれていました。一方では、 カリスマ的に有名な営業の天才が、「一に努力、二に努力、三四がなくて、五に努力」というような、突撃精神に基づく精神訓話を書いた本もありました。それは、営業成績のよくない私にとっては、かえって苦しい毎日をもたらしました。
そんなときに、「眠りながら成功する」という本に目がとまったのでした。眠りながら成功できたら、どんなによいでしょう。その本を買って、夜も寝ないで読み通しました。気づいたら、朝になっていました。それでも、なにかすがすがしい気分でした。やっと、自分の生き方が見つけられたような気がしました。
なかなか実現できない
読み終わったその日から、夢を紙に書いて暗唱し、毎日何回か、その紙を取り出して、読み上げていました。が、半年たっても、一年経っても、私の夢は実現しなかったのでした。私はまたもや、暗黒の闇のなかにもどってしまったような気がしました。「やはり、眠りながら成功するなんてことはない、人生はまったくつまらない」という気分でいっぱいになりました。夜になっても、寝る気にもなれません。気分でも変えようと、落語のカセットをラジカセで聞きました(その頃は、まだCDがありませんでした)。
八五郎:「こんちわー」
大家さん:「おお、八五郎か。こちらにズーとズーッとお入りなさい」
八五郎:「大家さん、そんなにズーッと入っていったら、壁をぬけちゃうよ」
大家さん:「何を言っているんだよ。そんなにズーッといかなくたっていいんだよ」
八五郎:「あっしも壁はこわしたくない」
大家さん:「来るたびに壊されたんじゃ、たまらないよ。ところで、よい陽気だね。どこかに行ったかい?」
八五郎:「へえ、観音様に拝みにいきました」
大家さん:「それはよいことをしたね。なにか願ってきたのかい?」
八五郎:「そりゃあ、もう願ってきました」
大家さん:「何を願ったんだい?」
八五郎:「えーっと、宝くじが当たるように、競馬が当たるように、それに道で大金を拾えるように、美人のカミさんがくるように、えーっとそれから・・・」
大家さん:「いいかげんにおしよ。それでいくらお賽銭をあげてきたんだよ」
八五郎:「いーや、大家さん、お賽銭なんかもっていたら、団子でも買って食うよ」
大家さん:「あきれたね。タダかい」
観音様も、たくさんの願いをタダで頼まれては、たまったものではありません。
そんなお話でしたが、なるほど、わたしの願いも、八五郎さんと変わらなかったのです。一度に多くの願い事を祈っても、達成できるわけではないのです。「現世利益」ばかり求めて、観音様への感謝の気持ちを持たない八五郎さんと、私は同じだったのです。

笑福亭ひよこ
マーフィー博士の著書のなかに、1963年(昭和38)に来日し、鎌倉を訪れたことが出てきます。彼はそのとき、日本人の厚い信仰心に感動したそうです。博士はキリスト教の信仰を重視しており、人の潜在意識は神につながっているという哲学が、心底にあります。それ故に「祈り」を大切にしています。
キリストに感謝し、祈りをささげるという行為は、キリスト教徒ではない私には、少し違和感がありました。が、そこはキリストを「宇宙の原理」のようなものとして考えればよいのではないかと考えました。なぜなら、「祈り」を通じて、潜在意識に思いが到達するからです。
プラシーボ効果という言葉もあります。実際には何の効果もない薬ですが、「これは病気に効く新薬だ」と病院のお医者さんに言われると、飲んでみたい気になります。それを服用すると、患者の病気に効果があるのです。「効果がある」と信じることによって、体の治癒力が増すためです。
理性と勧善懲悪
潜在意識には、毎日繰り返し、願いを言うことが大切です。しかし、あまりにも現状とかけ離れた願いだと、受け入れられません。なぜなら、人には理性があるからです。理性は、生まれてから後天的に培われたもので、社会生活を円滑にすごすために必要なものです。
「お金が欲しい」といって、強盗をしたらどうでしょう?警察につかまって、刑務所にいかなくてはなりませんね。私たちは人間社会では、秩序のなかで生きなければならないのです。

酔っぱらいひよこ
私が「大金持ちになりたい」と言うと、「そんな願いはかなうはずがない!」と理性が働くのです。
目の前には、厳しい現実があります。なかなか楽天的に、ものごとが進むはずがありません。大金持ちになりたいと願っても、何回も宝くじに当たるとか、いつでも万馬券ばかり当たるとか、投資したお金がいきなり数万倍になるとかしないかぎり、お金は増えていきません。そんなことはあり得ないのです。そのため、現実的でない夢は、実現不可能なのです。
夢が叶わないもうひとつの理由は、お金に対する考え方です。私たちは子どものころから、お金を多く求めることは、いやしいことだと教えられています。私の子どもの頃は、テレビはなく、映画館に時代劇をよく見にいきました。時代劇はほとんどが勧善懲悪ですから、お金持ちの商人と侍のお代官様が、結託して悪いことをしてお金儲けをしようとしていると、必ず正義の味方、白頭巾が登場し、お金持ちの商人とお代官様を切ってしまうという結末を見せられます。
私たちは、お金を求めてはいけないという考えを、知らず知らずのうちに植え込まれていたのです。「清く貧しく美しく」という言葉が、心地よく響くのはそのせいです。そんな頭の中に、急に「私は億万長者になる」と呼びかけても、理性に「とんでもない」と拒否されてしまうのです。理性の防衛線を突破しないと、願いはかなわないのです。
夢の実現には「トレーニング」が必要
それでは、小さな夢ならすぐにかなうか、というとそれも違うのです。あまり小さいと、興味を失って忘れてしまうでしょう。
潜在意識を利用して願いをかなえる方法として、いろいろな本に書かれているのは、願いを達成したことを「リアルに感じる」ということです。お金持ちになりたい人は、すでにお金を持っているとをリアルに想像して感じればいいのです。そのためのグッズも売られているのには驚きます。たとえば、ニセモノの札束の山とか、ニセ金塊とか、ニセ宝石類です。それらに囲まれて「達成感」を味わい、潜在意識に埋め込むというわけです。この方法には効果がないとは言いませんが、個人差があります。私は疑い深いので、ニセモノではごまかせない気がするのです。
「お金持ちになりたい」という願いは、正しいのです。しかし、そう願うだけでは、簡単には実現しないのです。マーフィー博士は著書のなかで、

まーぴよ博士
と言っています。そのためには、強く願うことだと言うのです。そうだとすると、実現しないのは、願いの強さが足りないのでしょうか?私は、強く願えば願うほど、達成感のなさに愕然とします。これでは、悪循環を引き起こしてしまいます。
といっても、一般の人がいくらイメージトレーニングをしても、オリンピックの選手のように記録は出せません。厳しい練習もしていないのに、できるわけはないのです。
たしかに、自分でも思いもよらないほど、ものすごい力が出るときがあります。それは、緊急の場合です。自分の生命にかかわるときには、自分でも予想しないくらいの力が出るのです。ことわざにも「火事場の馬鹿力」というのがあります。自分の子どもが車の下敷きになったときに、父親が、ひとりで車を持ち上げて子どもを救ったという話もあります。
でも、通常の場合は、なかなか車を持ち上げることはできませんね。それでは、どうしたらよいでしょうか?
あなたは「できる」
それは、自分で「できる」と信じることからはじめるのです。「これならできそうだ」という願いからはじめるのです。これなら無理がないので、理性に邪魔されることもなく、潜在意識に受け入れられるでしょう。
たとえば、少しずつお金を増やそうと考えます。コツコツと貯金をはじめたとします。時には、突然の出費もあるでしょう。そんなときにはがっかりせずに、

なんでもカードで解決しようとするひよこ
と自分に言い聞かせるのです。「大丈夫、私の心は億万長者なのだから」と言うことで、少しは気分がよくなります。繰り返し、繰り返し、「大丈夫、私の心は億万長者なのだから」と言っているうちに、本当に自分が億万長者になった気分になってきます。水前寺清子さんの歌で、「ぼろは着てても、心は錦」という歌詞があります。この歌詞は、聞き方によって仏教の教えにも似た、悟りの境地が歌われているようにも思われます。現在の状況を嘆かないで、受け入れなさい、そうすれば幸せになれる、と聞こえてくるのです。
そうは言っても、本当のお金持ちをあきらめる必要はありません。昔の江戸っ子のように、「宵越しの金は持たねえ」という心意気はかっこいいのですが、すっからかんというのも、お腹がすきます。
良子さんは、ブティックで働いていました。良子さんはいつか、自分の店を持ちたいと思っていました。しかし、資金がありません。コツコツと貯金をしたとしても、お店を開くまでに歳をとってしまいそうです。そこで良子さんは、好きな手芸でアクセサリーを作り、ネット販売しました。するとどうでしょう。だんだんと注文が増えてきて、3年後には、まとまったお金を手にすることができたのです。それでも、まだ資金は足りませんでしたが、女性起業家に対しての市町村からの支援もあり、良子さんは資金援助を得て、お店を開くことができました。今では、年間3千万円の売り上げがあるそうです。良子さんは、「最初は、できることからはじめました。いきなり借金はイヤでした。失敗したら、借金地獄からぬけだせなくなりますからね」と笑っていました。
世界にあなたの持っている
ベストを与えれば、最善のものが
あなたへ返ってきます。ジョセフ・マーフィー
まとめ
【ジョセフ・マーフィー博士】潜在意識の冒険物語
願いをかなえるには、潜在意識にやさしいステップ・バイ・ステップ方式で、だんだんと願いに近づいていくのがよいのです。いきなり結果を急いでも、破たんした時には悲劇です。急がば回れ。どのように夢を達成するか、自分の人生をゲームにたとえて、「セルフ・クエスト」のストーリーを作ってみるのです。そのなかで私という主人公が、いろいろな苦難を克服していくのは、楽しいものですよ。
著者プロフィール

- 外資系船会社を退職後、中国の船会社の代理店を経験しました。若いころから精神世界の本を読むのが好きです。宇宙のことや量子物理学的な話にも興味を持っています。最近は電子書籍の出版にもチャレンジしています。
発想法2017.08.21AI時代の幸せの探求 夢を叶える2017.08.14【ジョセフ・マーフィー博士】前世と来世☆もしも生まれ変わったら マーフィー博士2017.08.07【ジョセフ・マーフィー博士】不思議なシンクロニシティ マーフィー博士2017.07.31【ジョセフ・マーフィー博士】迷ったら無意識を知るチャンス