踏みしめるたびに、つま先から鈍い痛みが突き上げた。アパートの階段の一段一段へ、重い身体を運び上げるのに難儀する。ちらつく非常灯に合わせてこめかみがずきずき痛む。這うように廊下を進んでようやく部屋の前までたどり着くと、ドアにしがみついて身体を壁にもたれかけたまま、片手で鞄のファスナーをこじ開け、手探りで家の鍵を探す。見つからない。必死に鞄をかき回すと、ようやく冷たい金属の擦れる音。引っ張り出した拍子に鞄からポケットティッシュが飛び出した。拾い上げようと屈むだけで、頭に血が上り重心が取れなくなる。目の裏側に血液が集中するのがわかる。眼球が痺れて、視界が歪む。あてずっぽうで鍵穴に突っ込んだ鍵が、がちゃり、と回った。玄関を開けるなり、私はパンプスを脱ぎ捨てる。鞄を床に投げ出し、玄関マットの上に倒れこんだ。
もう、たくさんだった。