「心の中の何もない空白、ぽっかり空いた暗闇が嫌で嫌で仕方ないの・・・」
ある女性が語っていた言葉です。彼女は映画やエンターテイメントが大好きで、自分の本当にやりたいことを実現すべく夢を追いかけていましたが、心のどこかで「空白」「虚無」に対する恐れに気づいているようでした。
私たち人間という存在には、意識するにしろ無意識にしろ、『虚無と空白に対する恐れ』があるように思われます。
毎日の生活のなかにこれといって打ち込むものも見当たらない人の底知れぬ虚無と絶望は、その人でなくては分からないに違いない。しかし、このような底知れぬ空しさは、ある特定の人々に限ったことであろうか。否、本当は、人生そのものに内在しているものである。
私たちは幸か不幸か現世のなかで自分の居どころを与えられ、毎日の務めや責任を負わされ、人や物事から“一応”必要とされて忙しく暮らしており、そのおかげでこの虚無を、この「空」を、なんとか浅く紛らしている。
―神谷美恵子
どんなレベルのものであれ、人間の活動の根底には実は「虚無と空白からの逃避」が潜んでいるかもしれません。
私たちが本当に向き合いたくないもの、顔を背け、見ようとしないもの、忙しい日々の活動によってそれを覆い隠し、見ないふりをしているもの・・・ それは実は、自分の心の中にある果てしない空白、虚無かもしれない―